『DJ田中デミー賞』とはDJ田中が今年*1見たアニメやドラマ、映画など*2の中から個人的な独断と偏見により選ばれたランキングを勝手に発表していく自己満足企画である。
ちなみにこちらが昨年度の記事です↓
それではさっそくいってみましょう!
目次:
漫画部門
ゴールデンカムイ
本年度の漫画部門作品賞に選ばれたのは『ゴールデンカムイ』です!
前回のDJ田中デミー賞ではアニメ部門第3位を受賞したこの作品、昨年4月に約8年間の連載に幕を閉じ単行本全31巻で完結しました。
最終話直前には公式が期間限定で全話無料配信するという前代未聞のキャンペーンをしたことで記憶に残っている方もいるのではないでしょうか?自分も当時は「こんなことして大丈夫なの?」と思いましたが、無料公開期間が終わったあと気がついたら電子書籍版を全巻購入していたので、戦略としては正解だったのかもしれません。
『ワンピース』や『僕のヒーローアカデミア』も昨年似たようなキャンペーンをしていたので、漫画業界全体が「たとえ新規読者獲得のために短期的な損失があったとしても、長期的にはメリットの方が上回る」という考え方になってきているのかもしれないです。
ゴールデンカムイの魅力をいくつか挙げるとすると、
このあたりが幅広い年齢層に支持されている大きな理由だと思います。
ゴールデンカムイ原作本の購買比率だそうで、興味深いデータですね。https://t.co/6b2YGihMTf pic.twitter.com/nvAaHVrqu6
— 野田サトル (@satorunoda) 2020年10月10日
個人的にゴールデンカムイは「時代を超えて評価される作品」になるのではないかと思っています。ちなみに好きなキャラクターは鯉登少尉です。谷垣と並んで第二の主人公だと思っています。
アニメ部門
1位 蟲師
アニメ部門第 1 位の作品は『蟲師』です!
作者は1998年にアフタヌーン四季賞・四季大賞を受賞し、翌年「アフタヌーン」で商業誌デビューをした漆原友紀先生です。
およそ遠しとされしもの━━下等で奇怪、
見慣れた動植物とはまるで違うとおぼしきモノ達。
それら異形の一群を、人は古くから畏れを含み、
いつしか総じて"蟲"と呼んだ。
こちらはアニメ公式サイトから引用した「蟲」の定義です。
蟲というのはこの作品に出てくる架空の生物であり、私たちの知っている昆虫とは大きく異なります。主人公・ギンコの説明によれば、蟲とは生物の進化において原初の姿に近い生き物だということです。シリーズを通して見た印象としては、精霊や幽霊に近い存在なのかなと思いました(普通の人間には見ることができない)。
この作品は「黒船来航後も鎖国を続けた日本」が舞台となっていて、時代設定としては江戸と明治の間あたりだということです。たしかに、出てくる村はどこも一次産業(農業や漁業)が中心で、近代的な道具や建物は全く出てきません。
「蟲師」というのは蟲の影響によって、身体や精神に異常をきたした人たちを診療・治療するいわば「蟲専門の医者」です。ギンコはとある事情により同じ土地に長く滞在できないため、蟲師として人を助けながら放浪の旅を続けています。
物語は基本的に1話完結型なのでどこから見ても大丈夫ですが、蟲師という作品をより深く理解したいと言う方には順番通り見ることをおすすめします。派手な展開を求める人には正直物足りないかもしれませんが、自然(山・川・海)に対して畏敬の念を抱くことのできるこの作品はとても稀有で素晴らしい作品だと思います。
2位 鋼の錬金術師
アニメ部門の第 2 位は『鋼の錬金術師』です!
「錬金術」という言葉を耳にしたときにこの作品を連想する方は多いのではないでしょうか?作者は北海道にある実家の牧場を手伝いながら漫画投稿を続け、1999年にエニックスの漫画賞を受賞、その後 2001年に『鋼の錬金術師(以下、『ハガレン』と呼ぶ)』の連載を始めた荒川弘先生です。
荒川先生の作品はハガレン以外にも『銀の匙 Silver Spoon』や『アルスラーン戦記』など人気作が多く、自分も最初に読んだ作品は『銀の匙』でした。
この作品は錬金術の禁忌である「人体錬成」を行なったことにより、体の一部を失った兄・エドワードとその弟・アルフォンスの「元の身体を取り戻す」旅を描いた物語です。
ハガレンの存在は以前から知っていて、「いつかタイミングが合えば読んでみたいな」と思っていたのですが、昨年の8月にスマートフォン向けゲームアプリ『鋼の錬金術師 Mobile』がリリースされたことがきっかけとなりアニメを見ることになりました。
ハガレンは過去に2度「ボンズ」というアニメ制作プロダクションによってアニメ化がされています。1作目(通称:旧アニメ)は原作が完結する前に最新話に追いついてしまったため、途中から内容が完全にアニメオリジナルになったという珍しい作品です。普通に考えれば作者や原作ファンから怒られそうですが、一つの作品として見ると完成度が高いため一部のファンからは今でも高く評価されています。一方、2作目(通称:新アニメ)は原作の最終話までを忠実にアニメ化した作品で、自分は今回こちらを見ました。
好きなキャラクターはオリヴィエ・ミラ・アームストロング少将とキング・ブラッドレイ大総統です。
3位 メイドインアビス
アニメ部門の第 3 位は『メイドインアビス』です!
この作品かなり有名なので知っている方も多いのではないでしょうか?作者はゲーム会社でデザイナーとして10年間働いた後、フリーのイラストレーターとして独立し漫画家となったつくしあきひと先生。
メイドインアビスのアニメイベントに作者本人として登場して声優さんたちと喋ったり、つくし先生本人のアクリルスタンドが公式グッズとして販売されたり、アニメ放送時にはリアルタイムでTwitterに制作秘話を投稿したりと漫画家の中では珍しい「メディア露出が多くファンとの距離感が近い作家さん」です。
隅々まで探索されつくした世界に、唯一残された秘境の大穴『アビス』。
どこまで続くとも知れない深く巨大なその縦穴には、奇妙奇怪な生物たちが生息し、
今の人類では作りえない貴重な遺物が眠っている。
「アビス」の不可思議に満ちた姿は人々を魅了し、冒険へと駆り立てた。
そうして幾度も大穴に挑戦する冒険者たちは、次第に『探窟家』と呼ばれるようになっていった。
こちらがアニメ公式サイトより引用したメイドインアビスのあらすじです。
アビスには記録されているだけでも深界1層から深界7層までの階層があり、底へ近づけば近づくほど地上に戻るときの身体への負担が増えていきます(通称:アビスの呪い)。
絵柄は絵本のような優しい・柔らかいタッチですが、見た目に騙されてはいけません!つくし先生曰く、この作品を一言で表現するなら「ワクワクする自殺」らしいです。昨年発売されたゲーム『メイドインアビス 闇を目指した連星』がZ指定、つまり18才以上が対象であるということも考慮すると、「見た目に騙されてはいけない」という言葉の意味がよくわかるのではないでしょうか。
しかし、これだけ警告をしても「アビスの底を見てみたい!」と思ってしまうのが人間の好奇心です。ここまでの説明を読んで興味を持った探窟家向きのあなた!メイドインアビスという底の見えない大穴に飛び込んでみてはいかがでしょうか?
どうかあなたの旅路にあふれんばかりの呪いと祝福を。
ドラマ・ドキュメンタリー(DD)部門
1位 Mindhunter / マインドハンター
続いてDD部門第 1 位は『Mindhunter / マインドハンター』です!
この作品はジョン・ダグラスさんの著書『マインドハンター FBI連続殺人プロファイリング班』が原作となっています。
監督は『Seven / セブン』や『Fight Club / ファイト・クラブ』などの作品でも有名なデヴィッド・フィンチャーさん。主演は『Frozen / アナと雪の女王』のクリストフ役や、『The Matrix Resurrections / マトリックス レザレクションズ』でエージェントスミスを演じたジョナサン・グロフさんです。
1970年代後半、殺人犯の心理を研究して犯罪科学の幅を広げようとするFBI捜査官2人。研究を進めるうち、あまりにリアルな怪物に危ういほど近づいてゆく。
まだ「サイコパス」といった言葉があまり知られていない時代、FBI特別捜査官のホールデンは相棒のビルと共にFBI行動科学課を創設する。ホールデンたちは「犯罪者プロファイリング」という手法を使うことで連続殺人犯の心理を分析し、彼らの行動パターンを予測しようとするのであった。プロファイリングの一環として、誰もが一度は聞いたことのある有名殺人犯たちと刑務署の中で面会するのですが、そう簡単にいくはずもなく...。
というのが一通りのあらすじとなっています。
内容が内容なので、グロテスクな描写や暗い物語が苦手な方はやめておいたほうがいいと思います。ただ俳優さんたちの演技がすごいので、それだけでも十分見る価値はあると思います。残念ながら、現在シーズン3の制作が無期限延期となっているため、次のシーズンがどうなるのかは誰にもわからない状況です。
2位 ギレルモ・デル・トロの驚異の部屋
DD部門の第 2 位は『ギレルモ・デル・トロの驚異の部屋』です!
この作品は昨年10月にNetflixで配信されたドラマシリーズで、『ギレルモ・デル・トロ創作ノート 驚異の部屋』から着想を得た8つの作品からなるオムニバス形式のドラマとなっています。シリーズ全体の総監督は『Pacific Rim / パシフィック・リム』や『The Shape of Water / シェイプ・オブ・ウォーター』でも有名なギレルモ・デル・トロさんです。
どのエピソードにも共通している点としては、『世にも奇妙な物語』のタモリさんのようにデル・トロ監督が毎回ストーリーテラーとして登場し、物語の導入を担当しています。
また、例外なく全て「ホラー」です。年齢制限が付くレベルのグロテスクな描写も結構あるので、そこら辺はご注意ください。自分はホラーはあまり得意ではないので、目を覆いたくなるシーンがたくさんありました。
個人的には「エピソード1:ロット 36」「エピソード4:外見」「エピソード8:ざわめき」の3つの物語が特に面白かったです。
3位 悠久の地、サッカラ遺跡: 眩き時代を語る
DD部門第 3 位は『悠久の地、サッカラ遺跡: 眩き時代を語る』です!
この作品は2020年にNetflixにて配信された114分のドキュメンタリーです。内容は「約4千年間ほぼ手付かずの状態」で発見されたエジプト北部・サッカラの墳墓発掘作業に密着したものとなっています。
エジプトと言われて皆さんは何を想像するでしょうか?
「砂漠、ラクダ、ピラミッド」おそらくこのあたりでしょうか?
一般的にエジプトといえば砂漠の印象が強いですが、実はピラミッドのすぐ近くには道路を隔てて緑豊かな居住地や都市が広がっています(まるで絵のような景色)。
世界的にも有名な古代遺跡の発掘作業となれば、さぞかしお金も技術も費やされていそうなものですが、実は土を掘るところから全て人間の手作業で行われているため、少しでも気を抜くと貴重な出土品に傷がつく可能性があります。
その上、「数百人の作業員を養わないといけない」「いつ政府からの資金提供が打ち切られるかわからない」「土を掘ったからといって必ずしも何かが見つかるわけではない」というかなり不安定な条件の中、サッカラ遺跡の発掘作業は進められていきます。
古代文明や異文化に興味のある方にぜひおすすめしたい作品です!
映画部門
1位 犬神家の一族
続いて映画部門第 1 位は『犬神家の一族』です!
この作品は横溝正史さんの小説『金田一耕助ファイル5 犬神家の一族』を映画化したミステリー映画で、角川映画の初作品でもあります。監督は『ビルマの竪琴』でも有名な市川崑さん。主演は同じく『ビルマの竪琴(1985年版)』にて井上隊長を演じた石坂浩二さんです。また音楽を担当しているのは『ルパン三世のテーマ』でも有名な大野雄二さんです。
「犬神家の一族」はドラマ版も合わせると、合計10回近く映像化されています。最近では2020年そして今年の4月にNHKでテレビドラマが放送されたようです。ちなみに余談ですが、漫画『金田一少年の事件簿』の主人公・金田一一は金田一耕助の孫という設定らしいです。これらの情報からも分かるように、犬神家の一族は長きにわたって多くの人たちに愛され、影響を与え続けている作品だと言えます。
あらすじは一言でいうと、「遺産相続をめぐる一族のいざこざ」です。
全体的に暗い雰囲気の作品ですが、お洒落なオープニング、半世紀前に撮られたとは思えないほど綺麗な映像、探偵らしからぬ気の抜けた主人公、スケキヨの特徴的なマスクなど見る人を惹きつける要素がこの作品にはいくつもあります。
2位 この世界の片隅に
映画部門の第 2 位は『この世界の片隅に』です。
この作品は2016年に公開された、こうの史代さんの漫画『この世界の片隅に』が原作の長編アニメーション映画です。監督は『BLACK LAGOON』でも有名な片渕須直さん。主演は『あまちゃん』でお馴染みの女優・のんさんです。
『この世界の片隅に』にといえばクラウドファンディングを通して、パイロットフィルム(スポンサーに売り込むための映像)の制作費用約3,900万円を調達することに成功したことでも有名です。
戦中の広島県の軍都、呉を舞台にした家族ドラマ。主人公、すずは広島市から呉へ嫁ぎ、新しい家族、新しい街、新しい世界に戸惑う。しかし、一日一日を確かに健気に生きていく……。
あまり他の作品に例えるのは好きではないのですが、アニメ部門第3位の『メイドインアビス』に近いものがあると個人的には感じています。どういうことかというと、どちらの作品も優しいタッチの絵柄ですが、それは「この絵じゃないとあまりに内容がつらすぎて直視することができない」ということです。
この作品の特徴としては、他の戦争映画と比べてあまり悲壮感がない(全くないわけではない)ということや、戦時中も変わらず続いていた人々の生活、そしてそれが一瞬にしてなくなる恐怖を教えてくれるとても素晴らしい映画だと思います。
観賞後は、何とも形容しがたいモヤモヤした感情・余韻を抱えながらその日1日を過ごしたことをよく覚えています。
3位 Spider-Man: No Way Home / スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム
映画部門の第 3 位は『Spider-Man: No Way Home / スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム 』です!
昨年1月に公開されたマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の27作目にあたるこの作品は、とにかく「スパイダーマンが好きな人には絶対見て欲しい!」それに尽きます。監督はジョン・ワッツさん、彼はMCUのスパイダーマンシリーズ3作品全ての監督をしています。主演はおなじみのトム・ホランドさんです。
今作は「あるきっかけによってマルチバース(多元宇宙)の扉が開いてしまい、存在するはずのない人たちが別の並行世界から来訪してしまった...どうするスパイダーマン?」そんな感じのストーリーです。
これ以上説明するとネタバレになってしまうのでやめておきますが、『サム・ライミ版スパイダーマン』『アメイジング・スパイダーマン』を予習しておくとより楽しめると思います(特に深い意味はありません)。あと余裕があればぜひ『Venom / ヴェノム』も。
ちなみこのマルチバース設定は今後も引き継がれていくようなのですが、他の作品にどう関わってくるのでしょうか?今年は『スパイダーバース』の続編も公開されるようなのでそちらも楽しみです。
4位 シン・ウルトラマン
続いて映画部門の第 4 位は『シン・ウルトラマン』です!
監督は『シン・ゴジラ』でも有名な樋口真嗣さん。そして主演は斎藤工さんです。
昨年の6月頃に48時間限定で公開されていた本編冒頭映像を見たときに「これは映画館の大画面で見ないといけない」と思い、急いで最寄りの映画館で予約をしました。観賞後は自分の欲望に抗うことができず、全く買う予定のなかった劇場パンフレット、設定資料集、海洋堂のフィギュアを購入してしまいました。「大人買い」私の好きな言葉です。
「シン・ゴジラ」を見た時も思いましたが、実写映画によくある「原作をただそのままなぞるだけの展開」ではなく、ウルトラマンという作品の本質的な部分は残しつつ、時代に合わせて設定をうまく再構築しているのはさすがだなと思いました(個人の意見です)。
ちなみにウルトラマンが初めてスペシウム光線を打つシーンがあるのですが、そのシーンのモーションアクターを担当したのは庵野秀明さん本人らしいです。
5位 男はつらいよ
映画部門の第 5 位は『男はつらいよ』です。
監督は『釣りバカ日誌シリーズ』や『幸福の黄色いハンカチ』でも有名な山田洋次さん。そして主演は渥美清さんです。
驚くことに『男はつらいよ』シリーズは全部で48作品あり、「主演俳優が変わらない世界最長の映画シリーズ」としてギネス世界記録に認定されています。ちなみに、第4位で紹介したウルトラマンは「最も派生テレビシリーズが作られたテレビ番組」としてギネスに認定されているらしいです。
もともと『男はつらいよ』はドラマシリーズだったのですが、「最終話で主人公の寅さんがハブに噛まれて死亡した」ことに対して多くの視聴者から抗議が殺到したため、映画化に繋がったという興味深いエピソードがあったりします。
基本的にこのシリーズには物語の軸となるお決まりの展開があります。
- 寅さんが妹・さくらのいる浅草に帰ってくる
- 喧嘩した勢いでどこかへ旅に出る
- 旅先でヒロイン(通称:マドンナ)と出会う
- いろいろあってマドンナと浅草に帰ってくる
- マドンナに恋をする、そして失恋
- 傷心の中また新たな旅へ出る
主人公の寅さんは幼い頃から悪ガキで、不器用で、口下手で、調子に乗って酒を飲むと失敗し、カッとなるとすぐ手が出るというとても褒められた人物ではないですが、なぜか憎めない不思議な魅力を持ったキャラクターです。
今の時代ならコンプライアンス的に一発アウトでしょうが、これだけ長く人々から愛され続けている作品は世界的に見てもかなり珍しいのではないでしょうか。
今回のまとめ
今年度のDJ田中デミー賞はいかがだったでしょうか?
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